脳神経外科・脊椎脊髄外科

医療従事者、開業医向けトピックス

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正常圧水頭症とは?

60歳以降に発症する病態で、脳脊髄液がなんらかの原因で吸収されにくくなり、代償的に脳室が拡大し、運動障害や判断力の低下、失禁など生じる病態です。脳萎縮によるアルツハイマー病などとの鑑別が必要です。
高齢者の歩行障害の原因のひとつになっており、診断できれば、シャント手術という、比較的低侵襲な治療で症状の改善が可能です。

画像診断の特徴

脳室拡大を認めます。脳実質の大きさと脳室の幅を比べると、比率が0.3以上あります(EVANS Index › 0.3)
アルツハイマー病などにみられる脳室拡大との違いは、シルビウス裂などは開大しているが、中心の帯状回は萎縮がみられないのが特徴です(DESH Sign陽性)。
この2点と上記症状があれば正常圧水頭症が疑われます。

画像診断の特徴

診断と治療

正常圧水頭症が疑われた場合には、まず当院に5-7日入院の上、髄液タップテストを行います。
これは、腰椎から髄液を30cc程度穿刺して、前後で運動能力の向上や知能の改善の有無をみます。
診断ガイドラインを表にしました

治療は全身麻酔下にLPシャントという、体内に脊髄液を腹腔に流すチューブを挿入します。途中に圧を調整するバルブをおきます。

診断と治療合併症として、髄液の流れ過ぎによる低髄圧や、あとで閉塞するシャント不全などがありますが、最近のシャントは圧調整も外部から磁石ででき、かつMRIも施行できるタイプや、流れ過ぎの場合に外部から完全に流れなくすることもできるような使い易いシャントシステムが登場してきています。

症状が出たら早期に診断し、足の筋力が廃用になる前に治療することが重要です。


表.2011年度iNPH診療ガイドラインでの診断基準

必須項目 参考項目
Possible iNPH
  • 1) 60歳台以降に発症する
  • 2) 歩行障害、認知障害および排尿障害の1つ以上を認める
  • 3) 脳室が拡大(Evans index* › 0.3)している
    *EVANS Index:両側側脳室前角最大幅/その断面における頭蓋内腔最大値
  • 4) 他の神経学的あるいは非神経学的疾患によって上記臨床症状のすべてを説明しえない
  • 5) 脳室拡大をきたす可能性のある先行疾患(くも膜下出血、髄膜炎、頭部外傷、先天性水頭症、中脳水道狭窄症など)がない
  • 1) 歩行は歩幅が狭く、すり足、不安定で、特に歩行転換時には不安定性が増す
  • 2) 症状は緩徐進行性が多いが、一時的な進行停止や増悪など波状経過を認めることがある
  • 3) 症状のうち、歩行障害が最も頻度が高く、次いで認知障害、排尿障害の順である
  • 4) 認知障害は認知機能テストで客観的な低下が示される
  • 5) 他の神経疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、など)や脳血管障害(ラクナ梗塞など)の併存はありうるが、いずれも軽症にとどまる
  • 6) シルビウス裂・脳底槽は拡大していることが多い
  • 7) 脳室周囲低吸収域(periventricular lucency ; PVL)、脳室周囲高信号域(periventricular hyperintensity ; PHV)の有無は問わない
  • 8) 脳血流検査は他の認知症性疾患との鑑別に役立つ
Probable iNPH
  • 1) Possible iNPHの必須項目を満たす
  • 2) 脳脊髄液圧が200mmH20以下で、脳脊髄液の性状が正常である
  • 3) 以下のいずれかを認める
    • ①歩行障害があり、高位円蓋部および正中部の脳溝・くも膜下腔の狭小化が認められる
    • ②タップテスト(脳脊髄液排除試験)で症状の改善を認める
    • ③ドレナージテスト(腰部持続脳脊髄液ドレナージ)で症状の改善を認める
Definite iNPH シャント術施工後、客観的に症状の改善が示される

2011年特発性正常圧水頭症診療ガイドラインより引用